正立方体の結晶を持つパイライトの
母岩付鉱物標本です。
機械で切断したような人工的な
ゴールドのパイライトの結晶が
ゴツゴツした岩の中から顔出しているのは
自然の造形物とは思えない不思議さがあります。
側面は鏡のように平らで対象物を写し出します。
規則正しく現れた四角いパイライトと
それにくっついた有機的なフォルムの母岩。
対称的な造形を持つ二つの鉱物が一緒になっている様は
どこかユーモラスでかわいげがあります。
パイライト自体は珍しい鉱物ではありませんが
このように正立方体の鉱物標本で
大きさもあるものは限られて来ます。
スペインのナワホン鉱山より産出。
キュービックパイライトの産地だそうです。
鉱物名___Cubic golden Pyrite(黄鉄鉱)
サイズ___48x46x31mm
重さ____56g
原産地___ラ・リオハ州ナワホン鉱山(Navajun), スペイン
※特定記録郵便(300円)
パイライト(黄鉄鉱)は鉄と硫黄からなる硫化鉱物の一種で、六面体、八面体などの立方体に結晶しやすく、粒状や塊となって集合体をなすことが多い鉱物です。パイライトの「パイ」はギリシャ語で火を意味し、「きつく握りしめると火傷をする」と古代ギリシャの書物には書かれているようです。
強い保護力で持つ人を危険から護り、意識を高める働きがあると言われています。主な産地はスペインでこちらの石のように単一の立方体のみの結晶や、大きさの違う立方体が複数重なったマルチプルキュービック・パイライトも発掘されます。金と間違えられることから古来より「愚者の金」と呼ばれるそうです。
パイライトの正確な断面と規則正しい立方体を見ていると、どうしても『天空の城ラピュタ』のラピュタ島を支えるあのキューブ状の構造物を思い出さずにはいられません。原産地のスペインのナバフン鉱山はマドリードとバルセロナの間にあり、ラピュタの舞台となった古いヨーロッパ風の街並みを思い出します。
ミクロの世界では、鉱物や液体などの結晶は人工物よりも遥かに正確で規則正しいメカニズムを持っています。パイライトの結晶もその一つで、自然はむしろ人間が作る人工物よりもずっと正確で規則正しいエネルギーで作られているんだなと実感します。ラピュタの終盤で生き物のように正確に動くキューブ群はそれ自体が一つのシステム、武器のようでした。パイライトの鏡のように映し出し、正確な形状を持つエネルギー体は、持ち主に何よりも強い武器となるのかもしれません。
パイライトには自然の造形の神秘を改めて認識させる凄さがあります。