今年最大の驚きだったロンドゥクォーツとの出会い。
2021年秋のことです。
水晶というものの成り立ちを考えると、こんなのもありなのか、、、と思わず唸った逸品です。
今年の春に採掘され、秋に入荷し、業者さんの所ではすぐに売り切れてしまった幻の石。
まあそうでしょうね、、、と思います。
こんな石は見たことないですから。
水晶に詳しい人ほど、水晶のことを知っている人ほど驚きなのではないでしょうか。
白い部分は業者によるとサルファーやミルキークォーツとのことです。
他にクローライトやアンフィボールが入っているそうです。
ヒマラヤ山脈は火山帯ではないので、サルファーかどうか確認出来ませんが、太古のプレートテクトニクスで可能性が全くないわけでもないようです。
ちなみに、パキスタン南部には火山があり硫黄もあります。
こちらはまるでロケットのようなエクストラターミネーションを持つダブルターミネーション。
ファセットにはイシス面、柱面はクラスターが成長していて虹も見え、完成度の高いクォーツです。
息を呑む美しさというか、撮影しながら「完璧...」と心の中で何度も呟きながらシャッターを押していました。
ダブルターミネーションやエクストラターミネーションのような形状の完璧さ
ファセットや柱面の表情
インクルージョンの色味や付着物が奏でる風味など
全ての要素がまるでオーケストラのように響き合っていて、これほど完成度の高いクォーツはめったに出会えません。
私の中ではもうこのポイントは完璧なのです。
こちらもですが、ロンドゥクォーツにはファセットと柱面の境の辺がなだらかで、斜面のようになっているものがあります。
どういう作用でそうなるのか不思議なのですが、ロシレムにもありました。
ポイント内部のインクルージョン(アンフィボール)は上と下に集中していて、柱の真ん中はクリアで半透明になっています。
内包物が多いクォーツは濁りがあって不透明に見えますが、インクルージョンによって明るさで様々な表情を見せます。
水晶の中に絵具を隠しているようなもので、見るたびに印象が変わり、新しい発見があって、いつ見ても見飽きない魅力があります。
Roundu Quartz
98x38x36mm
174g
Stak Nala, Haramosh Mts., Roundu District, Gilgit-Baltistan, Pakistan
2021年春にパキスタンのギルギット・バルチスタン州のRoundu地区で発見されたロンドゥクォーツ。ヒマラヤ山脈の西端のラダック地方で産出された新種の水晶です。業者によると、白いポイント部分はサルファー・イン・クォーツとのことですが、ミルキークォーツとも言われました。スモーキークォーツ、クローライトやアンフィボールなど様々な複合成分の影響が見られる独特の風情を持つ石です。
石のほとんどが鉱物に覆われ不透明で売り物にならないそうですが、その中でも特別な石だけがパキスタンの山奥から遥々日本にやって来ました。そのため流通量は限られており、とても貴重な出会いの石となっています。
きれいに結晶したものは両剣水晶やカテドラル、タントリックツインやエクストラターミネーションなどメタフィジックな成長が見られます。
詳細はブログにも執筆中ですが、別次元の石の登場といった感じです。古さを感じさせる佇まいながら、テクノロジーのようなデジタルなサインはまるで失われた文明のオーパーツのよう。硫黄が入っているとのことですが、ヒマラヤのこの辺りが火山帯だという資料はなく、パキスタンの火山は南の海岸沖にあります。ただ条件的にはかつて火山帯があった可能性はあるようです。
ヒマラヤ山脈はアルプス・ヒマラヤ造山帯によって誕生しました。アルプス山脈の南にはイタリアの火山帯があり、サルファーの名産地です。同じくヒマラヤ山脈の南側にあるパキスタンでかつて火山帯があったとしても条件的にはあり得るのだとか。大陸を押し上げる側の山脈の南側は、火山帯が発生する条件が整っているようです。ちなみに、インドネシアを押し上げるオーストラリアによって、インドネシアは活発な活火山帯が形成されています。
ポイントの白さはアンフィボールのせいもかなとも思いますが、それにしても全体的になぜこのような素晴らしいカーキ色を生み出すことが出来たのか謎です。
美術品のように完璧で、一点のみ干渉の跡がありますが些細なものです。ここまで立派に成長し、表面の成分まで結晶化が進んでいるのを見ると、どこかまだ生きているかのような生々しささえあります。
わびさびや霊魂のような厳かさのある石。両剣は輪廻のような永遠の循環と魂の完全性を象徴しているように思います。